上智大時代、國弘先生の授業を受けた
安河内先生は、東進での授業やインターネットのインタビューの中で、國弘正雄先生からの影響について頻繁に言及しています。上智大学外国語学部英語学科で、非常勤講師として授業をしていた國弘先生の授業を安河内先生は受講しており、國弘先生の非常に厳しい指導を受けたそうです。
このような師弟関係から、安河内先生は大きな影響を受けました。帰国生がたくさんいた上智の英語学科の中で、どうすれば帰国生と対等になることができるか、悩んでいた安河内先生は、國弘メソッドの「音読・書き写し」は希望の光だったそうです。
また、國弘先生自身が帰国生ではなく、完璧な英語を話す一方で、発音はネイティブ風の発音ではなく、國弘先生は、ある意味で「日本人の英語」を話していました。このことが、安河内先生を勇気づけたのでした。
音読練習に配慮した安河内本
このように、國弘流1000回音読の影響を受けた安河内先生の本には、音読をする人への配慮が詰まっています。
安河内先生が『英語長文ハイパートレーニング1~3』を出版した21世紀初頭、日本の英語長文の参考書で音声がついている本は少数でした。安河内先生は、本に音声をつけたうえに、2種類の音声をつけました。
第1に、後追い読み用のネイティブの音声。意味の塊ごとに切って、生徒が読む時間のスペースを空けた音声です。この音声を使うことで、学習者は発音・アクセントの確認、意味の確認を細かく実施しながら音読を練習することができます。
第2に、オーバーラッピング・シャドウイング用のネイティブの音声。これは、自然なスピードで切れ目なく長文全体を音読している音声です。後追い読み用の音声でしっかりと発音・意味の確認をしたら、このオーバーラッピング・シャドウイング用音声で繰り返し(1000回)音読の練習をします。
今では、英語長文の参考書で音声がついている本は珍しくありませんが、後追い読み用の音声までついている本は、ほとんどありません。
安河内先生が大岩秀樹先生との共著で出版している『英語長文レベル別問題集1~6』(東進ブックス)にも、2種類のネイティブ音声がついています。
「音読用白文」とは何か
『ハイパートレーニング1~3』には、さらに音読用白文がついています。白文とは何でしょうか。
白文とは、もともとは漢文の用語です。高校の国語で学習する漢文には、いろんな記号や読み仮名が書き込まれています。内容を学習した後の教材として、白文というものがあります。
この白文は、教材についている場合もありますが、もし教科書などに白文がついていない場合には、何も書き込みがない白文を、自分でノートに書いたうえで、白文を正しく読む練習をするよう、漢文の先生は指導します。
英語長文の参考書は、長文が問題の課題文になっている問題集、という形式になっている場合が多く、その場合には英語長文に下線部が引かれていたり、空欄のカッコがあったりして、音読の練習用には使いづらい長文になっています。そこで安河内先生は、英語長文の白文を『ハイパートレーニング1~3』の巻末につけて、音読がやりやすいようにしているのです。
20世紀の初頭から、音読用音声や白文を英語長文の本につけている。このことは、安河内先生が音読に配慮した英語教育をしてきた証拠である、といっていいと思います。
安河内本を使った音読の順序
【例文】
English is a language which is used by a lot of people all over the world. It is spoken in England, in Canada, in the U.S.A., in Australia, and in New Zealand. It is also spoken in other parts of the world. Only Chinese is spoken by more people.
第1に、問題集ですから、問題を解きます。
第2に、文章を音読したりする前にオーバーラッピング・シャドウイング用音声を2回、聞きます。時々、この第1と第2の順序を逆にすることもお勧めです。問題を解く前に音声を2回聞く、ということをすると、リスニングの訓練になります。
第3に、解答・解説、辞書、文法の参考書を使って、長文の意味を確認します。音読を繰り返す前に、意味が確実に理解しておいてください。
第4に、後追い読み用の音声を使って、聞いたら読む、という後追い読みをします。付属の音声よりも長い単位(文章の単位)で後追い読みをしたい人は、オーバーラッピング・シャドウイング用音声を使い、文章の終わりで自分で音声を止めながら後追い読みをします。
第5に、オーバーラッピング・シャドウイング用音声を使って音読をします。まずはオーバーラッピング。慣れてきたらシャドウイング(文章を見ないオーバーラッピング)に挑戦してみてください。
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