「理系は文系より上」なのか?
高校生の間に「数学ができる人は理系」「理系は文系よりも上」という雰囲気があり、そのような雰囲気は年々、強まっていると思われます。しかし、数学ができる人は本当に理科系の勉強や仕事に向いているのでしょうか。
理学部で数学を専攻するのなら、難関校入試の数学が直接、役に立つ場合が多々あることでしょう。しかし、工学部や医学部に行く場合、勉強することのほとんどには数学は直接は関係しません。
理科系の仕事に数学は必須?
では、大学を出た後の仕事はどうでしょうか。たとえば工学部の建築学科を卒業して建築の仕事をする、とします。また、工学部で宇宙工学を学び、ロケットの開発をする仕事をする、とします。数3まで、青チャートを超えるレベルの数学を網羅的に勉強しておく必要があるでしょうか。
たとえ理系でも、ほとんどの仕事では、数3の応用・発展レベルを網羅的に学習しておく必要はまず、ありません。数3までの基本は学習しておく必要があるでしょうが、ある分野の応用・発展レベルが必要になれば、その時に懸命に勉強すればいいのです。
何を考えて文理を決めるのか
では、高校生の時に、何を考えて文系・理系を選択すればいいのでしょうか。日本経済が30年間、景気が悪い、ということも関係して、大人たちは「理科系は就職がいい」と言います。確かに理系は、研究室経由で就職がスムーズに決まることが多い。これは事実で、文系の就職は理系と比べると景気に左右されることが多い。しかし、難関大学に進学すれば、景気がよくない時でも、就職に困るということはありません。
文系の仕事の多くは、人間関係を調整する仕事です。一方、理系の仕事の多くは、技術を使ってモノづくりをする仕事です。
また、文系の仕事は社会全体、国や地球全体を考える仕事が多く、理系の仕事は専門分野を極める仕事が多い、ということも言えます。
高校生が文系・理系を選択する時には、自分が「人間関係の中で、全体を考える」ことに向いているのか、それとも「技術を使って、個別の分野を深める」ことに向いているのかを考えて決める。このような決め方をすれば、大学に入ってから「自分には向いていない」と感じることは少なくなるのではないでしょうか。
実は数学は決定的ではない
このように考えて文系・理系を選択し、もし理系に行きたいのだけれど数学や理科が苦手であれば、得意にするべく努力する。もし文系に行きたいけれど国語や社会が苦手であれば、得意にするべく努力する。みなさんが、このような文理選択をしたうえで、前向きな受験勉強をしていくことを強くお勧めしたいと思います。
最後に、文系・理系という分類が無意味になっている「地球環境」「総合政策」「国際協力」という分野が存在することにも言及しておきます。
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