開成中学校・高等学校の英語教育コンテンツがNHKで放送されています

オックスフォード学院

開成高校が開発した英語教材「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」のことを、みなさん、ご存じでしょうか。私は5年前まで知りませんでした。

エンジョイ・シンプル・イングリッシュは、今ではNHKラジオの番組になっています。しかし、ラジオ英会話、基礎英語レベル1・2などと比べると、非常にマイナーな番組で、その存在すら知らない人が非常に多いのではないでしょうか。

このエンジョイ・シンプル・イングリッシュは、開成中学・開成高校で英語を教えているカナダ出身のダニエル・スチュワート先生が自らテキストを書き、音声を作成して開成の生徒に配布していたものです。5分ほどの英文のテキストと音声だけ、というシンプルな教材で、音声を使ってただ繰り返して音読すれば英語が上達する、とスチュワート先生は考えました。

以下、開成中学・高校の秘密兵器、エンジョイ・シンプル・イングリッシュができてNHKラジオ番組になった経緯、その内容について、お話していきたいと思います。

日本の高校生は外国語が上達しない

スチュワート先生は、かつてはフランスの高校で英語を教えていました。フランスや母国カナダの中学生や高校生は、難しい英文に加えて、自分にとって易しいレベルの英語をたくさん読む、という外国語の勉強をしていたのと比べ、日本の中学・高校生は難しい英文を時間をかけて訳す、という勉強をしていました。つまり、開成の生徒たちの英語学習法は、多読、音読をほとんどやらない、という勉強方法だったのです。

しかし、このように難しい英文を訳す、という勉強方法を続けると、接する英語の量が少なくなります。また、接している文章が難しいので勉強がいやになり、結果として英語の学習時間が少なくなってしまいます。

そこで、作家でもあったスチュワート先生は、英検3級レベル(中3レベル)の易しめの英語で読んでいて楽しい多読用の教材を書き、これに音声をつけて開成の生徒たちに配布しました。これが、エンジョイ・シンプル・イングリッシュの原型になったのです。

つまり、独特だった日本の中高生の英語学習を、国際標準の多読・音読中心の学習に変えていきたい、と考えて作成されたのが、エンジョイ・シンプル・イングリッシュだったのです。

NHKが番組化を依頼してきた

このように、最初は開成中学・高校の内部の教材としてスタートしたエンジョイ・シンプル・イングリッシュだったのですが、この教材のことをNHKが知ることになりました。そして、NHKの番組にすることができないか、という依頼を開成側にしてきました

学校の対応として「これは、企業秘密なので無理です」と言うこともできましたが、開成は「一緒にやりましょう」という対応をしました。これは、非常に優れた判断だったと思います。なぜなら、NHKが制作に加わることによって、スチュワート先生とNHKのスタッフが協力してテキストと音源を作成することになるために、開成だけで制作していた時よりも当然、内容の質がアップします。

また、NHKのラジオ番組にする、ということになると、NHKラジオの音響スタッフ、業界用語でいう「音声さん」が加わるために、音源が「ラジオ番組」になります。鉄道に乗るシーンでは、鉄道の音が入るし、船に乗るシーンでは波の音が入ります。以前は、ただネイティブの先生が音読するだけだったエンジョイ・シンプル・イングリッシュの音がラジオ番組になることにより、聞いていて楽しい、ということになったのでした。

現在のエンジョイ・シンプル・イングリッシュ

今、エンジョイ・シンプル・イングリッシュは、大きく2つの種類があります。1つは、ラジオ番組です。

1日5分。ネイティブの音読を中心に効果音なども入ったラジオ番組です。放送文をまとめたテキストも毎月、販売されています。ただ、このラジオ番組としての「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」は、非常にマイナーな番組であることから、放送時間があまり良くありません。夜遅かったり、昼間だったり。そして、「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」は何十回も繰り返して音声を使って音読することに意味があるために、録音をする必要がありますが、この録音作業は面倒です。

そこで、書籍の「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」が便利、ということになります。ラジオ番組の「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」は、放送が終わると本になります。本は1500円程度で販売されており、音声は、古いものはCDつき、新しいものはMP3音源をダウンロードすることが可能です。

1回5分、内容が非常におもしろい

1回5分、その内容が本当におもしろいところが「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」の魅力です。

ラジオ番組の月曜から木曜までは、英検3級レベル。金曜日は準2級レベル。月曜、火曜、水曜、木曜は、それぞれの曜日ごとにシリーズになっており、半年間続きます。金曜日だけは、英検準2級レベルで、これは文学が基本になっているシリーズで、これまで、走れメロス、注文の多い料理店、枕草子、怪人20面相、シャーロック・ホームズなどがあります。

金曜日の文学シリーズも、なかなか面白いですが、私は月曜日から木曜日のシリーズが好きです。

これまで、偉人の伝記、日本や世界の観光案内、小説(家族や恋人の日常生活を描いたもの)、日本の落語を英訳したもの、科学の質問に先生が答えるもの、などがあります。

偉人の伝記では、ココ・シャネルやチャップリンの若いころを含めた人生を描いたもの、西郷隆盛が島流しになっていたころの話、リンカーンが子どものころの話、などがあります。どの人物も、有名人ではあるのですが、一般には知られていない若いころのエピソードは、大変興味深く、大人も思わず読んでしまう内容になっています。

あまり読まない開成中高生もいる

このように、開成中学・高校の先生が作りはじめた「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」ですが、開成の生徒たちの中には、この教材をあまりやらない人がいる、という噂を聞きます。

このような開成の生徒は、勉強が得意なので、難しい英語の問題集をたくさん解くことで英語の偏差値を上げることができるので「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」をやる必要性を感じない、ということになるのでしょう。

しかし「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」は、英語の4技能をバランスよく鍛えるための最高の教材です。この教材の音読を繰り返す人は、話す、書く、といった発信能力、また、オーバーラッピング・シャドウイングで常に音声を聞くことになるために、リスニングの能力も鍛えることができます。

ぜひ、一度「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」を手に取って、まずは5分間、ラジオドラマを英語で聴き、音読をしてみてください。

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